引き出しの奥に隠していた通帳を、夫に見つけられた。
「なにこれ。590万円もあるじゃん」
夫の声を聞いた瞬間、私は洗濯物を畳む手を止めた。通帳には、毎月7日に70,000円ずつ送金した記録が並んでいる。4月、5月、6月、7月、8月。残高は5,900,583円。
それは、子どものために私が8年かけて貯めてきたお金だった。
夫は通帳をひらひらさせながら笑った。
「こんだけあるなら、俺の車の頭金に使えるな。どうせ子どもなんて奨学金で大学行けるだろ」
その一言で、胸の奥がすっと冷えた。
私は怒鳴らなかった。ただ静かに言った。
「それは子どものお金。絶対に使わない」
すると夫は不機嫌そうに舌打ちした。
「俺に内緒で金を貯めるなんて、夫婦としておかしいだろ。家の金は共有財産だろ」
たしかに、夫婦の生活費は一緒に出している。けれどこの通帳に入っているお金は、私が夜に在宅で請け負った仕事と、ボーナスから少しずつ分けてきた分だった。子どもが将来、進学でも資格でも、やりたいことをお金で諦めないように。
それなのに夫は、まるで自分の財布を見つけたような顔をしていた。
翌日、さらに面倒なことになった。夫が義母に話したのだ。
「嫁ちゃん、590万円も隠してたんだって?」
義母は電話口で責めるように言った。
「家族に内緒で貯金なんて感じ悪いわね。少しくらい息子に使わせてあげたら?」
私はスマホをスピーカーにして、夫にも聞こえるように置いた。
「これは子どもの教育資金です」
「教育資金って言っても、まだ先の話でしょ。
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