学生時代、道徳の授業で忘れられない出会いがあった。
その日の授業は、いつもとは少し違っていた。
教室に来てくれたのは、全盲の男性講師だった。
先生から紹介されると、みんな少し緊張した。
「今日は目が見えない人の生活について、そして人との向き合い方について話してもらいます」
最初は静かだった教室。
でも講師の方は、とても明るかった。
自分の日常のこと。
困ること。
逆に、目が見えないからこそ気づけること。
冗談を交えながら話してくれて、少しずつクラスの空気も柔らかくなっていった。
そして最後に質問の時間になった。
何人かの生徒が手を挙げた。
「普段どうやって生活しているんですか?」
「料理はできますか?」
そんな質問が続いていた。
その時だった。
クラスには、どこにでもいるような「空気を読まないタイプ」の男子がいた。
その男子が手を挙げた。
そして、悪気があるのかないのか分からない表情で言った。
「もし相手がめちゃくちゃブスだったとしても、人を好きになったりできるんですか?」
教室の空気が一瞬で変わった。
何人かが顔をしかめた。
先生もすぐに、
「そういう聞き方は失礼だろ」
と厳しい表情になった。
普通なら、その場が気まずく終わってもおかしくなかった。
でも、講師の男性は怒らなかった。
少し考えてから、ゆっくり話し始めた。
「たしかになぁ」
みんなが静かに聞いていた。
「俺も指先で顔の輪郭を触れば、ある程度は想像できるんよ」
「でも、答え合わせはできないからなぁ」
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