配置換えが発表された翌週、私の隣の席には、入社二年目の若手社員、たかし君が座ることになった。
彼は普段から口数が少なく、会議でも必要なことだけを静かに話すタイプだった。目立つ失敗をするわけでもなく、かといって積極的に前へ出るわけでもない。私は勤続十四年目で、部署内ではそれなりに長く、彼にとっては先輩であり、業務上は上司にあたる立場だった。
席替えから五日目の朝のことだ。
出社してメールを確認し、ひと息つこうと給湯スペースへ向かった。うちの会社にはセルフ式のコーヒーサーバーがあり、飲みたい人が自分でカップを持って行き、自分の分だけ注ぐ。それは昔から当たり前の光景で、誰かが誰かのためにお茶を入れるような習慣は、少なくとも私が入社した十四年前から存在しなかった。
私はいつものように自分のマグカップにコーヒーを注ぎ、席へ戻った。そしてパソコンの前に座り、温かいコーヒーを一口飲んだ、その時だった。
隣から、低い声が聞こえた。
「……あの、前からちょっと言いにくかったんですけど」
私は手を止めて、たかし君の方を見た。彼はどこか不満げな顔をしていた。
眉をわずかに寄せ、唇を結び、まるでこちらが何かを怠ったかのような表情だった。
「どうしたの?」
そう尋ねると、彼は少しだけ身を乗り出して言った。
「なんでコーヒー、自分の分しか持ってこないんですか」
一瞬、意味がわからなかった。
私は反射的に、給湯スペースの方を指さした。
「コーヒー飲みたいなら、あそこにあるよ。サーバー、空いてたと思うけど」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=yecp8JoeKjw,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]