東京・六本木。
夜になると無数のネオンが輝き、大人たちの欲望や夢が交差する街。
その一角に、会員制クラブ「エンプレス」は存在していた。
高級シャンデリア。
香水の甘い香り。
シャンパンの泡が弾ける音。
そこは若さと美しさを武器にした女性たちが立つ華やかな舞台だった。
しかし、その裏側。
誰も見向きもしない厨房の隅に、一人の女性がいた。
名前は春江。
74歳。
白髪を後ろで束ね、色あせた作業着を着た小柄な女性。
彼女の仕事は皿洗いだった。
節くれだった手。
何十年も働いてきた傷跡。
それでも、グラスを洗う手つきだけは驚くほど美しかった。
無駄な動きは一切ない。
まるで長年磨き上げた職人のようだった。
「ごめんなさいね」
落としたグラスを拾いながら、小さく謝る。
しかし、彼女を尊敬する人間は誰もいなかった。
「まだいるの?このおばあさん」
「皿洗いしかできないなら、もう辞めればいいのに」
若いキャストたちは陰で笑っていた。
特に、店のナンバーワンキャバ嬢・城玲香。
23歳。
美しい容姿と抜群の会話力で、店の中心にいる存在だった。
ある日、厨房を通った玲香は春江を見るなり鼻で笑った。
「何やってるの?邪魔なんだけど」
「すみません」
春江はすぐに道を空ける。
すると玲香はわざと肩をぶつけた。
「本当に地味だよね。ここはあなたみたいな人がいる場所じゃないと思うけど」
周囲の女性たちは笑った。
しかし春江は何も言わなかった。
ただ、落ちたグラスを拾い、磨き続けた。
誰も知らなかった。
この老人が、かつて夜の世界で伝説と呼ばれた女性だったことを。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=RdTiSJPss1U,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]