「母さん、同居解消ってことで……」
息子の口から出たその言葉を聞いた瞬間、私は耳を疑いました。
「ゆりの両親と暮らすことにしたんだ」
まるで、もう決まったことを報告するだけのような口調でした。
その家の頭金として、私が出した一千八百万円の重みなど、彼の中ではもう消えてしまったのでしょうか。
しかし、彼らはまだ知りませんでした。
私が三十五年間、信用金庫の融資課長として働き続け、お金と人間の関係を誰よりも見てきたことを。
私は斉藤佳代子、六十六歳。
夫の正雄を一年前に亡くし、静かな一人暮らしを送っていました。
正雄は市役所に勤めた真面目な人でした。口数は少なくても、家族を何より大切にする人。休日には庭の手入れをし、夕食を食べながら「うまいな」と一言だけ言う。そんな穏やかな夫でした。
亡くなる直前、病室で私の手を握りながら言った言葉があります。
「佳代子、優太のことを頼む。あいつは、お前がいないと駄目だ」
その言葉を私はずっと胸にしまっていました。
一人息子の優太は三十八歳。自動車部品メーカーで働き、優しい性格でした。ただ、父親に似て口下手で、自分の意思を強く主張することが苦手でした。
妻のゆりさんは三十六歳。
明るく社交的で、誰にでも笑顔で接する女性でした。
孫には小学三年生の太陽と、六歳の美優がいます。
二人は私にとって、何より大切な存在でした。
そんなある日、優太が真剣な顔で我が家を訪れました。
「母さん、相談があるんだ」
そう言って差し出したのは、二世帯住宅のパンフレットでした。
「母さんも一緒に暮らさないか? 子どもたちにも部屋が必要だし、母さん一人の生活も心配だから」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=m96t6uynKbk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]