「他銀に変える? どうぞ、お好きに」
ユニバーサル中央銀行・東雲支店の応接室で、支店長の堂島慎太郎は鼻で笑った。
目の前に座っていたのは、油の染みた作業着を着た老人、篠原誠一郎だった。
篠原は小さな精密部品工場を営んでいる。
従業員は五人。
定年後も働きたい熟練工や、就職に苦労した中年職人たちを雇い、家族のように大切にしてきた。
だが、大口取引先の支払いが三ヶ月遅れ、運転資金として五百万円が必要になった。
篠原には莫大な個人資産があった。
しかし、自分の金を簡単に入れれば、従業員を不安にさせてしまう。
だからこそ、会社として正規に融資を受けようと銀行を訪れたのだ。
ところが堂島は、申請書をまともに見ようともしなかった。
「六十七歳で零細企業。担保も弱い。正直、うちの銀行にふさわしくありません」
さらに、篠原の作業着を見て顔をしかめた。
「次からは、もう少しまともな格好で来てください。ほかのお客様の迷惑になりますから」
応接室の隅にいた若手行員の久保田美鈴は、思わず唇を噛んだ。
目の前の老人は何も無礼なことをしていない。
ただ従業員を守るため、頭を下げているだけだった。
篠原は静かに立ち上がった。
「では、御行との取引は見直します。預金も他の銀行へ移します」
堂島はせせら笑った。
「預金ですか? どうぞ。たいした額でもないでしょうし」
篠原は何も言わず、深く頭を下げて支店を後にした。
その翌朝、本店の役員会議室に悲鳴のような声が響いた。
「頭取、大変です。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=O0w7MXyKzEM,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]