「せめて金持ちになってから、女遊びをさせてください」
仕事を終えて帰宅した夜。
郵便受けの中に、差出人の名前がない白い封筒が入っていた。
嫌な予感がしながら開くと、宛名は「奥さんへ」。
そこには、私の夫が女性にしつこく迫り、迷惑をかけていると書かれていた。
さらに、
「お金もないくせに、いい格好をしている」
「首輪でもつけて管理してください」
そして最後には、
「身体が臭いそうなので、きちんと洗ってあげてください」
とまで書かれていた。
整然と印刷された一枚の紙。
文章の最初から最後まで、夫と私への悪意で埋め尽くされていた。
普通なら、その場で夫を問い詰めていたかもしれない。
けれど私は、手紙を素手で何度も触ることはしなかった。
封筒、便箋、消印。
すべてを透明な袋に入れ、届いた時刻と状況をスマホに記録した。
帰宅した夫に手紙を見せると、夫の顔から血の気が引いた。
「俺は誰にも付きまとっていない」
夫はそう否定した。
しかし、私は夫の言葉だけを信じるつもりもなかった。
過去一か月分の通話履歴。
車のドライブレコーダー。
退勤後の位置情報。
確認できるものを一つずつ確認した。
夫の行動は、会社、コンビニ、自宅のほぼ三か所だけ。
ただし、三週間前に一人の女性から、十七通ものメッセージが届いていた。
「今度二人で飲みに行きませんか?」
「奥さんには内緒で大丈夫ですよ」
「少しくらい遊んでも分からないでしょ?」
それに対して夫が返したのは、たった一通だった。
「結婚しています。
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