「お父さん。今日、おじいさんが倒れてたから、救急車を呼んだよ」
小学2年生の息子が、帰宅するなりそう言った。
あまりにも突然で、私は意味が分からなかった。
詳しく聞くと、昨日の下校中、同じクラスの女の子と歩いていた息子は、道端に倒れている高齢の男性を見つけたらしい。
二人は最初、怖くて足が止まった。
周囲に大人はいない。
男性に声をかけても、返事はほとんどなかった。
それでも二人は逃げなかった。
女の子が男性のそばに残り、息子は近くの保育園まで走った。
「おじいさんが倒れています。助けてください!」
必死に訴える息子を見て、保育士さんがすぐに駆けつけ、救急車を呼んでくれたという。
救急車を待つ間、息子は自分の水筒を差し出した。
「お茶、飲めますか?」
実際に飲めたのかは分からない。
けれど、小さな手で水筒を握り、不安そうに男性の顔を見ていたそうだ。
私は胸が熱くなり、息子の頭を何度も撫でた。
「怖かっただろ。それでも助けを呼べたのは、本当に立派だ」
すると妻が得意げに言った。
「さすが私の子ね」
「どうしてそこで俺を切り離すんだよ」
家族で笑った。
だが翌日、学校から電話がかかってきた。
画面に表示された学校名を見た瞬間、私は身構えた。
息子が帰宅予定時刻を過ぎていたため、何か問題になったのかもしれない。
電話に出ると、担任の先生は少し緊張した声で話し始めた。
「昨日の下校中の件について、確認したいことがあります」
実は、二人が遅く帰ったことを知った一部の保護者から、
「本当に人助けをしていたのですか?」
「遊んでいて遅れた言い訳では?」
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