「ねえ、元奥さん。私たちの幸せな姿、ちゃんと目に焼き付けておいたら?」
マンションのエントランスに、甲高い笑い声が響いた。
私の前に立っていたのは、五か月前に離婚した元夫の健太と、その腕に絡みつく再婚相手の優香だった。
健太の手には、分厚い封筒が握られていた。
「来月、俺たち結婚式を挙げるんだ。お前にも見せてやろうと思ってな」
そう言って、彼は招待状を差し出した。
私は受け取らず、腕の中で眠る赤ん坊をそっと抱き直した。
その瞬間、健太の笑みが消えた。
「……その子、誰の子だ」
彼の声は、さっきまでの傲慢さが嘘のように震えていた。
私、佐藤美穂は四十五歳。
健太とは十年近く結婚生活を続けたが、子どもには恵まれなかった。
そのことを、彼は何度も私のせいにした。
「お前は女として終わってる」
「俺がもらってやらなかったら、一生独身だったんだぞ」
最初は仕事のストレスだと思って耐えていた。
けれど、彼の暴言は日を追うごとにひどくなり、やがて浮気まで発覚した。
相手は取引先の受付をしていた若い女、優香だった。
問い詰めると、健太は開き直った。
「お前に魅力がないから、他の女に目が行くんだろ」
離婚協議でも、彼は慰謝料を払おうとしなかった。
私はわずかな財産分与だけを受け取り、家を出た。
その一か月後、体調不良で病院へ行った私は、医師から思いがけない言葉を聞いた。
「妊娠三か月です」
十年授からなかった命が、離婚直後に私の中に宿っていた。
健太に知らせようか、何度も迷った。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=3WYqn-TlR_Y,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]