「お前に母さんやるよ。俺たち、もう母さんいらないから」
兄の忠雄が電話口で笑いながらそう言った瞬間、私は耳を疑った。
十年ぶりに日本へ戻ったばかりの私、夏は、夫の冬樹と一緒に急いで実家へ向かっていた。
兄夫婦が一か月の海外旅行へ行くと言い出し、寝たきりの母を家に置いていくと一方的に告げてきたからだ。
実家の玄関を開けた瞬間、鼻を刺すような異臭がした。
昔はきれい好きだった母の家とは思えないほど、廊下にはゴミが散らかり、台所には空の惣菜パックと酒の缶が山のように積まれていた。
「お母さん!」
夫の叫び声で一階の和室へ駆け込むと、私はその場で息をのんだ。
薄い布団の上に横たわっていた母は、骨と皮だけのように痩せ細り、髪は乱れ、体からは何日も風呂に入っていないような臭いがしていた。
「夏……帰ってきたのね」
母は私を見て、かすかに笑った。
「汚くてごめんね……」
その一言で、私は胸をえぐられた。
あんなに元気で、朝から庭の草むしりをし、スーパーを何軒も回っていた母が、目の前で小さな老人のようになっていた。
お腹が鳴った母に、私は急いで台所へ向かった。
冷蔵庫には酒と調味料しかなく、床下収納から見つけたパックご飯で、どうにか重湯を作った。
母は冬樹に支えられながら一口ずつ食べた。
「温かいもの、久しぶり……美味しいね」
私はその場で兄に電話をかけた。
「お母さん、こんな状態じゃない。どういうこと?」
兄は空港にいるらしく、面倒くさそうに答えた。
「母さんが勝手にそうなったんだろ。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=i-f_xTd-RFE,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]