「お腹空いたの? でも、このローストビーフは絶対アンタにはあーげない」
正月早々、義妹の真里がそう言って笑った瞬間、私の中で何かが静かに切れた。
目の前の食卓には、私が京都の料亭から取り寄せた五段重のおせちが広がっていた。
総重量は約六キロ。
親友の真奈が嫁いだ老舗料亭が、百貨店と組んで初めて販売する特別なおせちだった。
私は味の感想を返す約束までして、夫の秀治と二人で大切に運んできた。
それなのに、義母と義妹夫婦は、年始の挨拶も礼もなく、当然のように箸を伸ばした。
「カニはないの?」
「いくらもないの?」
「まあ、とりあえず味見してあげる」
真里は取り箸も使わず、ローストビーフを自分の皿へ山のように取っていく。
義母もそれをたしなめるどころか、一緒になって笑っていた。
毎年のことだった。
結婚して最初の正月、義母に頼まれて寿司を取りに行ったら、代金は未払いだった。
それ以来、酒もお菓子もおせちも、なぜか私たち夫婦が用意するのが当たり前になった。
義妹夫婦は手土産ひとつ持ってこない。
食べるだけ食べ、飲むだけ飲み、片付けもせず、最後には「次はもっと多くして」と文句を言う。
去年は蟹を持って行った。
すると義妹は自分で殻も剥けないくせに、「お姉さん上手だから、私の分もやって」と皿を差し出してきた。
それでも私は、正月くらい穏やかに過ごしたいと思っていた。
義父だけは穏やかな人で、いつも申し訳なさそうに私を見ていたからだ。
今年、私たちは少し早く義実家へ着いた。
義母はまだ寝ていて、義父だけが出迎えてくれた。
私は義父に先に食べてもらおうと重箱を開けた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=n3UpYFgKb7Q,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]