――「実はさ、くるみのためにうちの庭を貸してやることにしたんだ」
その一言で、私はすべてを理解した。
いや、正確には――理解することを、やめた。
夫・慎吾が指差した先は、私の実家の敷地の一部。祖父母の代から守られてきた土地であり、両親が私たちの新生活のために整えてくれた、大切な場所だ。
「もう契約したから。今日から工事も始まる」
隣で、くるみがクスクスと笑った。
その軽い笑い声が、やけに耳障りだった。
「貧乏だから助けてあげたいんだよ」
まるで自分が正義の味方であるかのように、慎吾は胸を張る。
私は何も言えなかった。
怒りではない。呆れだった。
――この人は、本当に何も分かっていない。
私は森平みかの、二十九歳。結婚したばかりの会社員だ。周囲からはしっかり者だと言われるが、それはただ「見て見ぬふり」ができない性格なだけだ。
そんな私の実家は、いわゆる“資産家”だ。だが、両親は決してそれをひけらかすことなく、堅実に暮らしてきた。だから私自身も「お金持ち」という自覚は薄い。ただ、この家と土地がどれほど大切なものかは、誰よりも理解している。
慎吾とはマッチングアプリで出会った。穏やかで、優しくて、話もよく聞いてくれる――そんな彼に安心し、結婚を決めた。
だが、その“優しさ”は、すべてが本物ではなかった。
くるみ――彼の幼馴染。
彼女が現れてから、すべてが狂い始めた。
「くるみは苦労してきたんだよ」
「放っておけないだろ」
何かあるたびに、彼はそう言って彼女を庇った。
最初は同情もした。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=yluothDtfeE,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]