商店街のはずれに、古い銭湯「松の湯」があった。
暖簾は色あせ、木の戸は少しきしみ、煙突から上がる白い湯気だけが、昔と変わらず町の空に溶けていた。
その銭湯を一人で守っていたのが、松井庄一という老人だった。
三年前に妻を亡くしてから、庄一の毎日は静かだった。
朝、浴槽を磨き、薪を確認し、番台に座る。
客は年々減り、商店街の明かりも一つ、また一つと消えていった。
それでも庄一は店を閉めなかった。
「ここが温かい場所であるうちは、まだ続けられる」
亡き妻の写真に、そう語りかけるのが日課になっていた。
ある真冬の夕方だった。
雪まじりの風が戸口を叩く中、銭湯の引き戸が小さく開いた。
そこに立っていたのは、八歳ほどの少年と、まだ五歳くらいの弟だった。
二人とも薄い服を着て、手足は赤く、唇は紫色に震えていた。
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