多紀雄太、二十八歳。
彼はどこにでもいる雇われ大工だった。毎日、汗と木くずにまみれながら働き、休日になれば古びた車に釣り道具を積み、海へ向かう。それだけが、彼にとって唯一の楽しみだった。
本当はもっと良い竿が欲しかった。新型のリールも欲しかった。だが、給料日前の財布を見れば、いつもため息しか出ない。
「金さえあればな……」
そんな言葉を、雄太は何度も飲み込んできた。
運命が動いたのは、ある何気ない日だった。駅の階段で重そうな荷物を抱えた老人を見かけ、雄太は放っておけずに声をかけた。
「爺さん、大丈夫かよ。階段の下までなら持ってやる」
老人は何度も頭を下げ、別れ際に一枚の宝くじを差し出した。
「助かったよ。これ、もらってくれないか」
雄太は苦笑した。宝くじなど当たるはずがない。けれど、老人の好意を無下にはできなかった。
当選発表の日、彼は何となく新聞を開いた。番号を追う指が途中で止まる。
一等、七億円。
そこに並んでいた数字は、手元のくじと完全に一致していた。
最初は冗談だと思った。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=pwgXv1IgGsE,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]