配達を終えて車に戻った瞬間、フロントガラスに黄色い紙が貼られていた。
一瞬、広告かと思った。
でも近づいた瞬間、心臓が嫌な音を立てた。
「駐車違反」
雨粒のついた黄色い紙には、はっきりそう書かれていた。確認開始時刻は10時49分。取付時刻は10時54分。場所は大田区萩中2-9付近。
たった数分。
でも、その数分で私は完全に固まった。
その日は朝から荷物が詰まっていた。時間指定も多く、再配達もあり、営業所からは何度も電話が入っていた。
「そこ、早めに回って。遅れるとクレームになるから」
言われた通り、私は細い道に車を寄せた。近くにコインパーキングは見当たらず、配達先は建物の3階。荷物は飲料の箱で、両手がふさがる重さだった。
急いで届けて、受領印をもらい、階段を駆け下りた。
それなのに戻ってきたら、この紙だった。
正直、最初は自分が悪いと思った。路上に停めたのは事実だし、言い訳はできない。
でも、どうしても納得できないことがあった。
配達先の指定は「玄関前まで」。しかも備考欄には「路駐不可、短時間でお願いします」と書かれていた。
会社側もその地域が止めにくいことを知っていたはずだった。
私は営業所に戻り、管理者に黄色い紙を見せた。
すると、返ってきたのは冷たい一言だった。
「違反は運転手の自己責任だから」
その瞬間、胸の奥がスッと冷えた。
毎日、時間指定に追われて、重い荷物を抱えて、クレームが出ないように走っている。それなのに、都合が悪くなった途端に全部こちらの責任。
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