数年前、本当に小さな奇跡みたいなことが起きました。
それは私が小学5年生だった頃の話です。掃除当番で保健室を担当していた私は、いつものようにベッドの周りや床を拭き、最後に干してある雑巾を片づけようとしていました。
その時でした。
雑巾を留めていた洗濯バサミを外そうとした瞬間、指先からパチンと弾けて、どこかへ飛んでいってしまったのです。
「あっ!」
音はしたのに、姿が見えない。
私は床にしゃがみ込み、ベッドの下、棚の隙間、マットの裏まで必死に探しました。保健室の先生にも「なくしたの?」と聞かれ、同じ掃除当番の子にも手伝ってもらいました。
でも、見つかりませんでした。
その洗濯バサミには、私の名前が書いてありました。母が持ち物に全部名前を書いてくれていたもので、私のフルネームが、母のいつもの字で書かれていたのを覚えています。
ただの洗濯バサミです。
でも、子どもの私には妙に気になって、掃除のたびに「あれ、どこに行ったんだろう」と思っていました。
結局、そのまま見つからないまま私は卒業しました。
中学、高校、大人になり、結婚し、子どもが生まれました。
その小さな洗濯バサミのことなんて、いつの間にかすっかり忘れていました。
それから何年も経ったある日。
我が子が、偶然にも私の母校に入学しました。
校舎の匂い、廊下の感じ、少し古くなった下駄箱。参観日で学校へ行くたびに、「ああ、ここに自分も通っていたんだな」と懐かしくなりました。
そして、我が子が小学5年生になった時のことです。
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