玄関を開けた瞬間、私は思わず足を止めた。
床の上に、見覚えのない黒い機械が置かれていたからだ。
小さなバッグのようなケースに入った端末。中からは白い紙が1枚、途中まで出たままになっている。ボタンには「発行」「停止」の文字。どう見ても、普通の荷物ではない。
「え、これ……配達員さんの機械じゃない?」
さっき荷物を届けに来たのは、佐川の配達員さんだった。
受け取りのサインをして、いつも通り玄関を閉めた。そのあと10分ほどして戻ってきたら、なぜかこの機械だけが置き去りにされていた。
最初は、何かの控えかと思った。
でも近づいて見ると、伝票のような紙が出たまま。もしこの中に送り状番号や住所の情報が残っていたら、勝手に触るのも怖い。私はすぐに写真を撮り、時刻もメモした。
午後4時18分。
置かれていた場所は玄関前ではなく、室内のマットの上。つまり、荷物を渡したあと、配達員さんがうっかりそのまま置いていった可能性が高かった。
夫に写真を送ると、すぐ電話が来た。
「それ、絶対に勝手に操作しないほうがいい。営業所に連絡して」
私は端末には触れず、佐川の営業所に電話した。
ところが最初に出た人は、少し面倒そうな声で言った。
「配達員が端末を置いていくことは基本的にありませんので」
その言い方に、少しだけカチンときた。
でも私は怒鳴らなかった。
「では、写真を送れる窓口はありますか。午後4時18分に撮影しています。伝票の紙も出たままです。個人情報が関係するものなら、早めに回収したほうがいいと思います」
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