駐車場の精算機の前で、私は一瞬固まった。
「え、安すぎない?」
仕事帰りに寄ったコインパーキング。数時間停めていたはずなのに、表示された金額が思っていたよりずっと安かった。最初はラッキーだと思った。でも、こういう時ほど嫌な予感がする。
番号を押し間違えたのか。誰かの車の料金を精算してしまったのか。逆に、自分の車の分がちゃんと払われていないのか。
モヤモヤしたまま車へ戻ると、ワイパーに小さな紙が挟まっていた。
「まさかクレーム?」
近づいて取ってみると、それはノートの切れ端だった。暗い車内灯の下で広げると、丁寧な手書きの文字が並んでいた。
「ワイパー失礼します。駐車場の番号を押し間違え、それに気付かず精算してました」
思わず声が出た。
「え、そういうこと?」
どうやら誰かが、自分の駐車番号と間違えて、私の車の料金を払ってくれていたらしい。しかも、そのまま知らん顔して帰ることもできたのに、わざわざメモまで残してくれていた。
さらに読み進めると、そこにはこんな言葉があった。
「このうっかりが仕事中でなくて良かったです。少しでも何かの足しになればと思います」
私はしばらく、その紙を見つめたまま動けなかった。
普通なら、間違えた側もイライラすると思う。なんで自分が他人の分を払ったんだと腹を立ててもおかしくない。名前も連絡先も書かず、ただユーモアのある優しい文章だけを残して帰っていった。
その時、さっき精算機の前で「安いな」と少し喜んだ自分が恥ずかしくなった。
私はもう一度、精算機の方へ戻った。
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