全国各地を転々とする転勤族の宿命。それは、家族にとっての「逃れられない日常」であった。私が大手メーカーの支店長として各地を転々とするたび、妻と息子はそれに付き従う。それが当たり前の家族の形だと、私は疑うこともなかった。
息子が小学校四年生の冬だった。次の転勤先が告げられた時、それまで従順だった息子が、初めて私の言葉に激しく抵抗した。
「行きたくない! ここには僕の親友がいるんだ。やっと、初めてできた本当の友達なんだよ!」
息子は泣き叫び、私の足にしがみついて懇願した。しかし、当時の私は冷徹にそれを突き放した。
「転勤は仕事だ。お前の友達ごときで、父親の出世や生活を犠牲にできるか。諦めろ。社会に出れば、人間関係なんて使い捨ての道具に過ぎないんだ」
その言葉が、息子の心に何を残したのか。当時の私には知る由もなかった。その日を境に、息子は変わった。新しい土地へ行くたびに、彼は自ら周囲と壁を作るようになった。誰とも深く関わらず、ただ淡々と学校へ通い、帰宅するだけの生活。友情という贅沢を自ら切り捨てた息子の背中は、幼いながらにどこか老人を思わせるような孤独を纏っていた。
私はそれを「自立心が芽生えた」と都合よく解釈していた。だが、妻は違った。妻は息子の変化を誰よりも憂い、私を責め続けた。それでも私は、「男は黙って環境に適応しろ」と繰り返すばかりだった。
それから数十年が経過した。息子は大学を卒業し、難関を突破して公務員となった。私たちが定年を迎え、ようやく落ち着いた田舎町で静かな余生を送っていた頃のことだ。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=ISn5Z1RQWjI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]