父の三回忌で実家に戻った日、私は庭の物置から聞こえる小さな物音に足を止めた。
外は吹雪だった。
古びた物置の隙間から雪が吹き込み、その奥で母が毛布一枚にくるまり、震えていた。
「お母さん……?」
私の声に、母はゆっくり顔を上げた。
唇は紫色で、頬はこけ、髪は乱れていた。
「歩美……来てくれたのね」
その声は、昔の明るい母のものではなかった。
私は急いで自分のコートを母にかけ、実家の玄関を叩いた。
出てきた兄の正午と兄嫁の千加子は、暖房の効いた部屋でぬくぬくと過ごしていたようだった。
「お母さんが物置にいるって、どういうこと?」
私が問い詰めると、千加子は悪びれもせず笑った。
「同居したくないって言うから、望み通りにしてあげただけよ」
兄も肩をすくめた。
「母さんが一緒に住みたくないって言ったんだ。文句言われる筋合いはない」
その瞬間、私の中で何かが音を立てて切れた。
父が亡くなったのは二年前。
地方で農業をしていた両親は素朴で仲が良く、父の葬儀の時、母は魂が抜けたようになっていた。
そんな中、兄は法要も終わらないうちに言った。
「で、俺はいくら相続できるんだ?」
父の預金は約一千二百万円。
母に六百万円、私と兄に三百万円ずつ分けた。
私は受け取った分も母のために使うつもりで、海外赴任先から毎月八万円を仕送りしていた。
父の一周忌の頃、兄夫婦は仕事を辞め、家賃がもったいないと言って実家へ転がり込んだ。
最初は母の面倒を見てくれるならと安心していた。
けれど母の声は電話のたびに弱くなっていった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=wRlv9x1dRE8,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]