退去立ち会いが終わった数日後、管理会社から1枚の精算書が届いた。
封筒を開けた瞬間、私は思わず固まった。
「敷金返還額……▲188,725円?」
入居時に敷金は払っていなかった。だから退去費用が多少かかるのは覚悟していた。でも、6年以上住んだ部屋で、18万円超えの請求はさすがに胸がざわついた。
明細には、玄関のクロス洗浄、クロス欠損補修、巾木入隅洗浄、ドア傷補修、廊下のクロス洗浄、北洋室のクロス欠損、窓下クロス補修、クローゼット棚補修……細かい項目がびっしり並んでいた。
「これ、全部こっちが払うの?」
私はすぐには電話しなかった。まず、精算書を写真に撮った。次に、入居した日の部屋の写真を探した。スマホの古いフォルダに、荷物を入れる前の玄関、廊下、北洋室の写真が残っていた。
よく見ると、玄関ドアの小さな傷は入居時からあった。廊下のクロスの色ムラも、家具焼けではなく経年のくすみに見える。6年以上住んでいれば、普通に日焼けもするし、壁紙だって新品のままではない。
翌日、管理会社に電話した。
「精算書を確認しました。内容について、1つずつ根拠を教えてください」
電話口の担当者は、少し面倒そうに言った。
「退去時の修繕費ですので、皆さんこのような形でご負担いただいています」
その“皆さん”という言葉に、私は静かに聞き返した。
「私は皆さんの話ではなく、この部屋の話をしています。6年以上住んだ物件で、経年劣化分まで請求されていませんか?」
担当者は一瞬黙った。
私は続けて、入居時の写真、退去時の写真、精算書の該当箇所をまとめてメールで送った。
「玄関ドアの傷は入居時写真にも写っています。クロスの全面洗浄や補修についても、借主負担と貸主負担の内訳を具体的に出してください。
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