家計簿をつけていて、毎月必ず出てくる500円の使途不明金に気づいたのは、半年ほど前のことだった。
金額はいつも同じ、出金日もほぼ月の最初の日曜日と決まっていた。最初は自分の記帳ミスだと思っていたが、三ヶ月続けて確認しても、原因は分からないままだった。
気になって古い通帳を遡ってみると、同じ500円の出金は何年も前から続いていた。
私がこの家に嫁いでくる、ずっと以前からのようだった。夫に聞いても「そんなの気にしたことないな」と、あまり興味のない様子で答えるだけだった。
同居している義母に、思い切って尋ねてみることにした。
「毎月の500円って、何かに使ってるんですか」
義母は一瞬、少し驚いたような顔をしたあと、静かに話し始めた。
義母には、夫より五つ年上の長男がいたのだという。私が嫁ぐよりずっと前、成人する前に病気で亡くなったのだと初めて聞かされた。義母は毎月最初の日曜日、その子の月命日にあわせて、近所の神社の子ども支援の募金箱に500円を入れることを、長年一人で続けてきたそうだ。
「大げさに言うことでもないから、誰にも話してなかったのよ」
義母は少し照れたようにそう言って、通帳を静かに閉じた。夫にとっては、会ったこともない兄の存在だった。それでも義母は、毎月欠かさずその習慣を続けてきたのだった。
その日以来、私は家計簿にその出金の理由を書き添えるようになった。数字だけを見ていた頃には分からなかった、義母の静かな時間の重みを、少しだけ知った気がした。