毎晩21時ちょうどに、庭のライトが一瞬だけ点滅する。
最初は電気系統の不具合だろうと思っていた。けれど三週間ほど続くと、さすがに気になり始めた。夫に聞いても「知らないな、古い照明だし」と、あまり関心のない様子で答えるだけだった。
不思議だったのは、点滅の時刻になると、いつも高校生の息子の様子が変わることだった。リビングにいても急に自分の部屋へ戻り、スマホを片手に何かを確認している。
試しに何度か時間を記録してみたが、点滅の瞬間は一分たりともずれがなかった。まるで、誰かと示し合わせているかのようだった。
「誰かと連絡取ってるの」
そう尋ねても、息子は「別に」とだけ答えてはぐらかした。反抗期だからだろうかと悩みながらも、私はどうしても気になり、ある晩こっそり息子の部屋の前で耳を澄ませてみた。
中から聞こえてきたのは、電話の声でも会話でもなく、アプリの通知音と、小さな独り言だけだった。
「おやすみ、また明日」
思い切ってドアを開けると、息子は少し照れくさそうにスマホの画面を見せてくれた。そこには、小学生の頃に転校していった親友の名前があった。二人は今もスマート家電を連携させるアプリを使い、それぞれの家の照明を通じて「おやすみの合図」を送り合っていたのだという。
時差のある海外に引っ越した友人と、毎晩同じ時刻に光を灯すことで、離れていてもつながっている実感を持ち続けていたらしい。
「言うの、なんか照れくさくて」
息子はそう言って、少し笑った。庭のライトの点滅は、遠く離れた友情が今も続いている証だった。その夜から、私も点滅の瞬間を、少しだけ楽しみに見るようになった。