「Apple Watchを着けて勤務するなんて非常識よ。今日中に反省文を書きなさい」
朝礼が終わった直後。
病棟に響いたその声に、十数人の同僚が一斉にこちらを見た。
声の主は、勤続20年を自慢するベテラン看護師の佐藤さんだった。
私はこの病院で働いて3年目。
これまで医療事故はもちろん、患者さんから苦情を受けたことも一度もない。
「院内規定では禁止されていませんよね?」
私は落ち着いて聞き返した。
実際、同じ病棟にはApple Watchを着けている医師や看護師が4人いた。
しかし彼女は鼻で笑った。
「ほかの人はいいの」
「あなたはまだ若いんだから、指導を受けたら黙って従いなさい」
またか。
そう思った。
1か月前には、私が通勤に使っているバッグを見て、
「新人のくせにブランド物なんて生意気」
と言われた。
1週間前には、ほかの看護師と同じ髪型なのに、私だけナースステーションの中央で結び直させられた。
勤務表でも、なぜか私ばかり厳しい夜勤が続いていた。
それでも私は、職場の空気を悪くしたくなくて黙っていた。
だが、その日の彼女はさらに言った。
「反省が足りない内容だったら、看護師長に“不服従”として報告するから」
私は尋ねた。
「私が違反した規則の名称と、条文を教えていただけますか?」
すると彼女は机を強く叩いた。
「私がここで20年働いてきたのよ!」
「私が言うことが、この病棟のルールなの!」
その瞬間、私の中で何かが切れた。
「分かりました。反省文を書きます」
私がそう答えると、彼女は満足そうに笑った。
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