祖母が亡くなり、四十九日を終えた頃、実家に残された部屋を片づけることになった。長く一人暮らしをしていた祖母の部屋には、古い着物や写真、手紙のやり取りに使っていた文房具などが、ていねいに整理された状態で残されていた。几帳面な性格だった祖母らしく、どの棚も引き出しも、ラベルを貼って中身が分かるようにしてあった。
片づけの中で、私は祖母がずっと使っていた小さな文机に手をつけた。
引き出しをひとつずつ開けていくと、一番奥の段だけが開かなかった。鍵がかかっているようだった。
鍵はどこにも見当たらず、開けるのを一度はあきらめかけた。それでも気になって、押し入れの奥にあった祖母の裁縫箱をひっくり返してみると、底の布の下から、小さな鍵がひとつ出てきた。試しに差し込んでみると、かちりと音がして引き出しが開いた。中には、便箋を重ねた封筒の束が、色あせた輪ゴムでまとめて入っていた。輪ゴムはすでに劣化していて、触れた瞬間にほろりと切れてしまった。数えてみると、全部で23通あった。
どの封筒にも、同じ人物の名前が宛名として書かれていた。けれど不思議なことに、どの封筒にも切手が貼られていなかった。
消印も、ひとつも押されていなかった。つまりこの23通は、一度も投函されないまま、20年以上もこの引き出しの中に眠っていたことになる。
一番古い封筒の裏には、日付が書かれていた。今から23年前のものだった。宛名の人物に、私はまったく心当たりがなかった。祖母の口から、その名前を聞いた記憶は一度もなかった。
片づけの手を止め、母にこの束を見せた。
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