ガスのメーターだけを撤去してもらうはずだった。
きっかけは、しばらく使っていなかった建物の整理だった。ガス会社に電話をして、「メーターの撤去だけお願いします」とはっきり伝えた。担当者も「メーターですね」と復唱し、工事日も決まった。
当日、私は仕事で立ち会えなかったため、外回りだけの作業だし問題ないだろうと思っていた。
ところが夕方、現地を確認しに行って、思わず声が出た。
「え、給湯器までないんだけど……?」
壁際には、配管だけが残っていた。テープで雑に巻かれた管、外された跡、ぶら下がったコード。頼んだのはメーター撤去だけ。給湯器を外していいなんて、一言も言っていない。
すぐに会社へ電話した。
「今日メーター撤去をお願いした者です。給湯器まで外されています」
電話口の事務員さんは、最初あっさり言った。
「こちらの記録では、給湯器撤去の記録はありません」
「では、なぜ現場から消えているんですか?」
「担当に確認してみます」
その曖昧な返事に、私は一気に嫌な予感がした。まさか、撤去したものとしてどこかへ持って行かれたのか。鉄屑として処分されたのか。怒りが込み上げたが、私は感情的にならず、まず証拠をそろえることにした。
作業前に撮っていた写真。
電話で依頼した日時のメモ。
工事予定の連絡履歴。
そして、給湯器がなくなった現場写真。
全部まとめて会社へ送った。
翌日、折り返しの電話が来た。今度は責任者だった。
「確認したところ、現場担当が撤去対象を誤認していた可能性があります」
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