内見の時、私はキッチンを見た瞬間、思わず黙り込んだ。
コンロは左。シンクは右。
その間にある作業スペースは、まな板を置いたらほぼ終わり。
「え、ここでどうやって料理するの?」
案内してくれた担当者は、にこやかに言った。
「最近のコンパクトキッチンは、皆さんこういう感じですよ」
その“皆さん”という言葉に、私は小さく引っかかった。
皆さんって誰?
毎日ご飯を作る人も、本当にこれで平気なの?
家に帰ってからも、あのキッチンの写真を何度も見返した。確かに見た目はきれい。ステンレスも新品で、収納もそれなりにある。でも、料理をする側から見ると、致命的に真ん中のスペースが足りない。
野菜を切る。
切ったものを一時的に置く。
鍋のふたを置く。
調味料を並べる。
熱い皿をよける。
それだけの動作が、写真の中では全部渋滞していた。
数日後、契約前の確認で管理会社へ行った時、私は写真を見せながら聞いた。
「このキッチン、料理をする人の目線で設計されていますか?」
担当者は少し困った顔をした。
「単身向けなので、簡単な自炊を想定していまして」
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