職場で「あの2人、怪しいよね」と噂されている男女がいた。
私は別に興味がなかった。
誰が誰と付き合おうが、不倫だろうが、恋愛事情なんて本人たちの問題。
仕事に関係なければ、正直どうでもいい。
私が唯一気になる恋愛ニュースがあるとすれば、俳優の吉沢亮さんの結婚相手くらいだった。
「あんな綺麗な人の隣に立つ人って、どんな人なんだろう」
その程度の興味しかない。
そんなある日のこと。
急ぎで確認しなければならない資料があり、私は資料室へ向かった。
会議まで時間がない。
「早く取って戻らないと」
そう思いながらドアノブに手をかけた瞬間だった。
中から妙な声が聞こえた。
「僕ちんは……疲れましたでしゅ」
一瞬、何の声か分からなかった。
続いて女性の声。
「あらあら、どーちちゃったのぉ?」
……。
私は無言で固まった。
その声の主は、噂になっていた2人だった。
しかも男性は私の直属の上司。
普通なら気まずいと思う場面なのかもしれない。
でも、その時の私の頭の中にあったのはただ1つ。
「資料が必要」
それだけだった。
時間はない。
誰かの恋愛ドラマを見に来たわけではない。
私はそのままドアを開けた。
狭い資料室。
当然、私が入ってきたことは一瞬でバレた。
2人は慌てたように距離を取った。
「あ、お疲れ様です」
私はそれだけ言った。
余計なことは何も言わない。
見たことも、聞いたことも、聞かなかったことにする。
それが一番平和だと思った。
しかし、問題は数日後に起きた。
突然、上司から呼び出された。
「少し話がある」
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