父の葬儀を終え、私は静かに病院へ戻った。院長室のドアを開けた瞬間、胸の奥で何かが音を立てて崩れた。
父の椅子に座っていたのは――いとこの永山大祐。この病院の副院長だ。
足を組み、背もたれにふんぞり返りながら私を見る。
「お、戻ってきたの?てっきり辞めたのかと思った」
隣では事務次長の白岡誠一が満面の笑みを浮かべていた。
「礼子さんが来ないので、事務長は私が引き受けました」
二人は楽しそうに顔を見合わせる。
「院長もいないしさ、しばらく俺が院長代理ってことで」
父がつい昨日まで座っていた椅子を、まるで自分の物のように叩く。
「まあお前は……どうする?雑用でもやる?」
私はしばらく黙って二人を見つめた。怒りで胸が焼けるようだったが、声は驚くほど静かだった。
「その席、降りてください」
「は?」
大祐は鼻で笑う。
「勘違いしてない?ここはもう俺の席だよ」
白岡も肩をすくめる。
「礼子さんはミスが多いですからね。医者なんて無理ですよ。事務員でも感謝すべきじゃないですか」
二人の笑い声が院長室に響いた。
だがその日の夕方、私は正式に理事会を開いた。祖父の代から続く病院の規定では、
院長が急逝した場合、後継は理事会が決定する。
そして――
「永山礼子を新院長に任命する」
決定は即日だった。
理由は単純だ。私はこの病院の理事であり、そして唯一の常勤医師資格を持つ理事だったからだ。
翌朝、私は院長として出勤した。
院長室の机の上には――退職届の束が山のように置かれていた。
ドサッ。
その音に思わず眉が動く。
そこへ、大祐と白岡が入ってきた。
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