深夜一時を回った頃、玄関のドアが静かに開く音がする。「ただいま……あ、夜食ありがとう」
その言葉が、私の日常だった。
私は夫・正義のために、毎晩欠かさず夜食を用意していた。彼は自分のバーを経営しており、帰宅はいつも深夜になる。冷蔵庫に入れておいた料理を食べ、朝になると必ず「ありがとう」と笑顔で言ってくれる――そんな優しい夫だった。
だからこそ、あの朝の出来事は、私の人生を根底から揺るがすほどの恐怖だったのだ。
私は大手化粧品メーカーで働いている。二十代後半の頃、友人の紹介で正義と出会った。「すごくいい人だよ」
そう言われて会った彼は、確かに明るく、人当たりの良い男性だった。飲食業界で働きながら、いつか自分のバーを持つのが夢だと語っていた。
二年間の交際の間、彼はずっと優しかった。
私は幼い頃に両親を亡くしており、家族というものに強い憧れを抱いていた。だから彼からプロポーズされたとき、胸がいっぱいになったのを今でも覚えている。
結婚後、私が両親から相続したマンションで新生活を始めた。そして二年目、正義はついに自分のバーをオープンした。
私は彼の夢を応援したくて、遺産から二百万円を出資した。その時の正義は、涙ぐみながら何度も私に感謝してくれた。
開店祝いの日、店のスタッフである高木くんと三人で乾杯した。夢を叶えた正義の姿は、本当に誇らしげだった。
バーを始めてから、私たちの生活は少し変わった。
私が帰宅して眠る頃、正義は店に向かう。それでも休みの日にはデートもしたし、家事も分担していた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=vXZ-mr34A8A+,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]