「見て! この駐車、めっちゃうまくない?」
久しぶりに自宅の駐車場へ車を入れた私は、得意げに家族を呼んだ。
普段は近くの実家に車を止めている。
自宅の駐車場は狭く、片側にはブロック塀。少しでも角度を間違えれば車体をこすりそうで、ずっと敬遠していた。
ところがその日は、実家の駐車場が使えなかった。
「まあ、何とかなるでしょ」
そう思ったのが、すべての始まりだった。
ハンドルを少し切って前進。
角度を直して、また切り返す。
窓から顔を出し、ブロック塀との距離を何度も確認した。
「あと少し……よし」
車がぴたりと収まった瞬間、思わず小さく拍手した。
運転席から見る限り、完璧だった。
「私、駐車の才能あるかも」
気分よく車を降り、前へ回った。
そして固まった。
車の前方とブロック塀の間に、隙間がない。
いや、隙間がないどころではない。
白いバンパーが塀に密着していた。
「……これ、当たってる?」
目を細めて確認する。
角度を変えて見る。
スマートフォンのカメラを差し込もうとする。
入らない。
見事な「ぴったり駐車」ではなかった。
ただの接触だった。
そこへ家族が出てきた。
「うまく止められたって?」
「うん。ぴったりすぎた」
「どれくらい?」
「距離、0センチ」
家族は車の前を見て、数秒黙った。
「それ、止めたんじゃなくて、当てたんだよ」
私は慌てて運転席へ戻ろうとした。
「ちょっと待って。焦って動かしたら、傷が広がるかもしれない」
家族に止められ、まず車と塀の状態を写真に残した。
幸い、塀は自宅のもので、周囲に人もいなかった。
助手席側から家族に位置を確認してもらい、ハンドルを動かさず、ゆっくり数センチだけ後退した。
車が離れた瞬間、2人でバンパーをのぞき込んだ。
「傷、ある?」
「……うっすら白くなってる」
「車も白いんだけど」
「塀も白いね」
笑っていいのか、泣いていいのか分からない。
念のため整備工場へ相談すると、幸い深いへこみやライトの破損はなかった。
バンパーの表面に塀の汚れが付着していただけで、丁寧に確認してもらい、大きな修理は不要だった。
もちろん、塀も破損していなかった。
その日のうちに、家族と駐車位置を見直した。
目印を分かりやすい場所に置き、塀との間には十分な余裕を確保することにした。
もう「ぎりぎりまで寄せる」ことを上手だとは思わない。
本当に上手な駐車は、余裕を残して安全に止めることだ。
ちなみに、あの日撮った写真を見た家族は今でも言う。
「確かに、めっちゃぴったりだったね」
褒めているようで、まったく褒めていない。