「たかが駐車場で、そこまでします?」
自分が契約している区画に勝手に車を止めていた男は、悪びれもせずそう言った。
こちらは毎月、きちんと料金を払っている。なのに帰宅すると、白い軽バンが当然のように止まっている日が続いた。
最初は勘違いだと思った。
ワイパーに「契約者専用です。次回からご遠慮ください」とメモを挟んだ。管理会社にも連絡した。
それでも無断駐車は止まらなかった。
ひどい日は、仕事帰りの午後8時から深夜まで車が動かない。仕方なく近くのコインパーキングに止めるたび、余計な出費が増えた。
2週間で4回。駐車料金は合計3200円。
領収書と、無断駐車の日時が分かる写真は、すべて残しておいた。
そして5回目。
また同じ白い軽バンが、私の契約区画にいた。
もう我慢の限界だった。
私は管理会社に事情を伝えたうえで、友人にも協力してもらい、軽バンの前後に車を止めた。車体には一切触れず、相手が戻るまでその場で待った。
30分後、男が缶コーヒーを片手に現れた。
「おい、なんだこれ! 出られないだろ!」
「そうですね。私も毎回、止められなくて困っていました」
「ちょっと止めただけだろ。どかせよ」
「ちょっと、が2週間で5回です」
男の表情が変わった。
「証拠でもあんのか?」
私はスマートフォンを取り出し、日時入りの写真を順番に見せた。
続いて、4枚の駐車場の領収書。そして、管理会社とのやり取り。
「全部あります。ナンバーも毎回同じです」
「だからって、閉じ込めるのはやりすぎだろ!」
「その点も含めて確認してもらいましょう。
管理会社の担当者と警察に連絡済みです」
そこで初めて、男の威勢が消えた。
数分後、担当者と警察官が到着した。
男は「空いていたから使っただけ」と繰り返したが、担当者が契約書を示して告げた。
「ここは月極駐車場です。空いているように見えても、使用権は契約者にあります」
警察官からは私たちにも、車でふさぐ行為は新たなトラブルになりかねないと注意があった。
私はその場で車を移動した。
一方、男はこれまでの無断駐車を認め、コインパーキング代3200円を負担。今後は立ち入らないことを、管理会社の立ち会いのもと書面に残した。
「最初から、そう言えばよかったのに」
男は最後まで不満そうだった。
私は、ワイパーに挟んだ注意書きの写真を見せた。
「言いましたよ。あなたが無視しただけです」
それ以降、白い軽バンは一度も現れない。
空いている駐車場は、誰でも使っていい場所じゃない。
誰かが料金を払い、守っている場所だ。
他人の我慢の上に成り立つ「ちょっとくらい」は、いつまでも通用しない。