その日も、朝から時間との戦いだった。
目覚ましが鳴る前に起きて、子どもの朝ごはんを準備する。
「早く着替えてね」
「忘れ物ない?」
保育園まで送ったあと、時計を見る。
もう余裕なんてない。
そこから急いで電車に乗り、会社へ向かう。
毎日こんな生活だった。
でも、私は一度も仕事を言い訳にしたことはなかった。
遅刻もしない。
提出期限も守る。
任された仕事は最後までやる。
「シングルマザーだから仕方ない」
そんな風に思われたくなかったから。
だからこそ、あの日の朝。
自分の机に置かれていた小さな付箋を見た時、手が止まった。
最初は、業務連絡だと思った。
でも、そこに書かれていた文字を読んだ瞬間、頭が真っ白になった。
「日本の首相が言ってるように、馬車馬のように働いてください」
「シングルマザーとか関係ないです」
……何これ。
一瞬、冗談かと思った。
でも、何度読み返しても同じだった。
私は仕事をサボっているわけじゃない。
子どもを育てながら、必死に働いている。
それなのに「シングルマザーだから配慮してほしい」と言ったこともない人間に対して、この言葉。
しかも口頭ではなく、紙に書いて置いてある。
その瞬間、不思議なくらい怒りが消えた。
逆に冷静になった。
「この人、自分で証拠を残したんだ」
そう思った。
私はすぐにスマホを取り出した。
付箋を撮影。
文字がはっきり分かるように何枚も撮った。
日時も記録した。
そして、そのまま部長へ連絡した。
「少し相談したいことがあります」
会議室に入り、私は何も大げさな説明をしなかった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]