「撮ってどうすんの?」 タクシー運転手はバックミラー越しに私のスマホを睨み、鼻で冷たく笑った。その軽んじきった様子に、私の胸の奥に静かな怒りが湧き上がった。
昨日の夕暮れ、いつも通り自転車で帰路についていた。 車道左端には白線で区切られた自転車走行帯が設けられ、往来する車の数も多かったため、私はルール通りそのレーンを真っ直ぐ進んでいた。
だが前方のタクシーが唐突に左へ寄り、停車した。 最初は乗客を乗り降ろすためだと思い、少し待とうとした。だが車体の位置を確認した瞬間、私は慌ててブレーキを強く握った。 タクシーの後部が白線を完全に踏み越え、自転車レーンの半分以上を塞ぎ、通行を遮断していたのだ。
右側には高速で車が次々と通過し、左はガードレールが壁になっている。どう頑張っても安全にすり抜ける幅など存在しない。無理に避ければ車道に大きくはみ出し、重大な事故に繋がる恐れがある。
私はクラクションを一度、軽く鳴らした。 バックミラーの中で運転手の目と視線がぶつかった。 それなのに車は微動だにせず、「勝手にどうにかしろ」と言わんばかりに居座り続ける。
後ろから別の自転車が一台近づき、私の後ろで停止した。同じように進路を塞がれ、困り果てた様子で車道の流れを眺めている。 私は再びベルを鳴らし、注意を促した。
すると運転手が窓を下げ、面倒くさそうな苛立った声を投げつけてきた。 「ちょっとくらい待てないの?」
その一言で、私の中の我慢の糸が切れそうになった。 急いでいるわけではない。
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