届いた一本のムービーが、私たちの幸せな一日を一瞬で地獄に変えた。
スマホの画面を開いた瞬間、鼻にかかった軽薄な女の声が耳に刺さった。
『参加者ゼロ人の気分はどう?』
動画の背景には、娘の職場の同僚たちがずらりと並んでいた。
五十人近い大人たちが揃って笑い、まるで宴会でも開いているように、楽しげに騒いでいる。
私はその瞬間、すべてを理解した。
娘の結婚式を、同僚全員がドタキャンしたのだ。
ただ来ないだけならまだしも、わざわざ嫌がらせの動画まで撮って送りつけてくるなんて。
怒りが一気に込み上げ、手の拳が震えた。頭の中は真っ白になり、言葉も出てこなかった。
そんな私の隣で、小さくて弱弱しい声が響いた。
『パパ、ママ……ごめんね』
振り返ると、純白のウェディングドレスを着た娘・菜七子が、今にも泣き崩れそうな顔で立っていた。
これはこの子が人生で一番幸せなはずの日だ。
一番輝かしいはずの一日が、他人の悪意によって完全に台無しにされた。
胸が激しく締め付けられ、苦しくてたまらなかった。
その時、隣に立つ夫の聡が、静かな低い声で一言呟いた。
『……五十人、全員クビにするわ』
その声は驚くほど落ち着いていた。
聡は普段、怒りを表に出す人ではない。いつも冷静で、穏やかな人だ。
だからこそ、彼が本気で怒った時は、声が極端に低くなる。
今の彼は、心底怒りを燃やしていた。
『この動画、リアルタイムじゃない。もう宴会は始まって終わりかけてる』
聡はスマホの画面を冷めた目で見つめながら続けた。
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