「この部屋は来月から、まりかに使わせるわ」
義母の紀子は、そう言いながら私の仕事机の上に巻き尺を置いた。
隣では義妹のマリカが、まるで自分の部屋になることを当然のように、私の椅子に腰掛けていた。
夫のユースケは、その日仕事で家を空けていた。
私は一瞬、声を荒げそうになった。
しかし、ようやく母親との関係を見直し始めたユースケを、また板挟みにしたくなかった。
だから私は怒りを飲み込み、ただ静かに言った。
「ここは私の仕事部屋です。自宅で打ち合わせもします。勝手に使うことはできません」
するとマリカは不満そうに口を尖らせた。
「家族が困っているのに、自分の仕事ばかり優先するんだね」
紀子は娘をたしなめるふりをしながら、私へ冷たい視線を向けた。
「咲さんは昔から、自分のことばかり大切にする人なのよ」
穏やかな声だった。
だからこそ、その言葉は鋭く胸に刺さった。
私は机の横に置いていた湯飲みを手に取った。
すっかり冷めたお茶だった。
この家は、私とユースケが結婚二年目に購入した小さな一戸建てだった。
頭金の多くは、私が独身時代に貯めたお金から出した。
ユースケも住宅ローンを負担している。
だから名義は夫婦共有にした。
「二人で働いて、二人で守る家だからな」
そう言って笑ったユースケの顔を、私は今でも覚えている。
しかし、その日から紀子の態度は変わった。
「息子の家に嫁の名前まで入れるなんて聞いたことがない」
何度説明しても、紀子には理解できなかった。
彼女にとって私の名前があることは、息子を奪われた証だったのだ。
その時、マリカが突然巻き尺を取り出した。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=uylcdgLx-x8,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]