港に着いた瞬間、私は思わず足を止めた。
朝の潮風が頬をかすめる。だが、それよりも先に目に飛び込んできたのは、静かに水面に浮かぶ自分のクルーザーだった。
「……え?」
電話で「海に沈んじゃった」と笑っていたママ友の声が、耳の奥でまだ生々しく響いている。
沈んだ? どこが?
目の前の船は、どう見ても港にちゃんとある。少しも沈んでいない。
私は深見玲子。三十歳になったばかりのシングルマザーだ。
十二歳の息子ヒロキと二人暮らしをしている。仕事は、自分で立ち上げたクルーズパーティーの運営。幼いころから船が好きで、「いつか船を使う仕事がしたい」と思い続けてきた。そして二十四歳のとき、実業家の父に借金をして大型クルーザーを三隻購入した。
当時は当然、不安でいっぱいだった。だが、豪華な船上パーティーは予想以上の大ヒット。予約は常に埋まり、借金は返済でき、今では順調に黒字を続けている。
仕事は順風満帆。そう思っていた。
しかし、世の中で厄介なのは仕事より、ママ友付き合いなのだと、私はこの日あらためて思い知らされることになる。
私が苦手にしていたのは、かすみさんという女性だった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=WuPDhAqf_LA,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]