男にとって、趣味とは単なる娯楽ではない。それは社会の歯車として生きるための精神的な支柱であり、日々の労働の対価として積み上げた「魂の結晶」である。私にとってのそれは、十年間かけて少しずつカスタムを施してきた愛車、大型バイクだった。
その事実に気づいたのは、ある土曜日の朝のことだ。ツーリングの準備をしようとガレージへ向かった私は、言葉を失った。
そこにあるはずの重厚な金属の塊が、忽然と姿を消していたからだ。
「……嘘だろ」
足元が崩れ落ちるような感覚だった。妻の姿を探し、リビングへ向かうと、彼女は優雅に紅茶を啜っていた。私が問い詰めるまでもなく、彼女は悪びれもせず言い放った。
「ああ、あのバイクのこと? 売ったわよ。だって維持費もかかるし、何より場所を取って邪魔だったから。業者に引き取ってもらって、二十万円になったわ。家計の足しになるし、いいことでしょう?」
怒りで震える手が止まらなかった。二十万円? 私がパーツ代だけでどれほど注ぎ込んできたか、どれほど思い出が詰まっているか。彼女は一度として興味を持たなかった。興味がないどころか、最初から「邪魔なゴミ」としか見ていなかったのだ。
「誰の許可を得てそんなことをしたんだ。あれは俺の金で、俺の意志で所有していたものだぞ」
私の低い声に、妻は鼻で笑った。
「そんなに怒ること? どうせ走る時間なんてほとんどないんでしょう。無駄なものを処分しただけ。それより、その二十万円でリビングのカーテンを新調するから」
彼女の言葉には、夫に対する敬意も、共用物に対する最低限の配慮も欠けていた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=S-Vr3YgZRIg,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]