「余命は、長くても半年でしょう」
医師にそう告げられたとき、私は意外なほど冷静だった。
もう十分に生きた。
子どもを育て、働き、行きたい場所にも足を運んだ。
楽しいことも、苦しいことも、ひと通り経験した。
「やりたいことは全部やったから、後悔はありません」
私は家族にもそう話していた。
けれど夜になり、消灯後の病室で1人になると、胸の奥に小さな寂しさが浮かんだ。
こういうとき、独り身は少し心細い。
そして、遠い学生時代の記憶が突然よみがえった。
教室の窓際。
私の隣には、少し無愛想だけれど優しい男の子が座っていた。
困っていると黙って助けてくれた。
忘れ物をすると教科書を見せてくれた。
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