うちの娘はその頃、言葉を覚え始めたばかりだった。
特に気に入っていたのが「おいで」で、正しくはまだ言えず、いつも少したどたどしく「オデー!」と言っていた。
それがもう可愛くて、家族みんながその言い方に癒やされていた。
その日、夫はリビングの椅子に座ってくつろいでいた。
少し離れたところには娘が立っていて、夫のほうを見ながら両手を広げていた。
抱っこしてほしいのだろう。
でも娘は、甘えたい気持ちはあっても、自分からはあまり動きたがらない。
すると夫も同じように両手を広げて言った。
「コッチおいで!」
すると娘も負けじと、
「オデー!」
と返した。
お互いに両手を広げたまま、一歩も動かない。
夫は「おいで」と呼び、娘も「おいで」と呼ぶ。
抱っこしたい夫と、抱っこされたい娘。
でも2人とも、できれば自分は動きたくない。
その構図があまりにもおかしくて、私は思わず吹き出してしまった。
しばらくそのやり取りは続いた。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください