「やれるものなら、やってみればいいじゃないですか」
銀座の高級鮨店「寿司天竜」。白木のカウンターに座る三代目店主・霧島達也は、薄笑いを浮かべながらそう言い放った。
目の前にいるのは、質素な服装をした老夫婦だった。
榊原源一郎、68歳。
そして、45年間寄り添ってきた妻・吉江。
二人にとってその日は特別な日だった。結婚45周年の記念日。吉江がずっと憧れていた名店で、夫婦水入らずの時間を過ごすために予約した食事だった。
しかし、店に入った瞬間から空気は変わった。
「失礼ですが……本当にこちらでよろしいのですか?」
霧島は予約帳を確認した後、源一郎の服装を上から下まで眺めた。
「うちは格式のある店ですからね。お客様のような格好では、少し場違いではないでしょうか」
周囲の客から小さな笑い声が漏れる。
吉江は唇を噛みしめた。
夫と共に苦しい時代を乗り越え、決して贅沢を求めず生きてきた。その人生そのものを否定されたような気持ちだった。
さらに追い打ちをかけるように、隣の席に座っていた銀行員の黒田周平が口を挟む。
「こういう店に来るなら、それなりの身なりで来るべきでしょう」
黒田は大手銀行の営業課長だった。
そして源一郎が昼間、銀行で見かけた人物でもあった。
その銀行では、若い女性職員・柿崎葵が黒田から理不尽な叱責を受けていた。
葵は真面目で、困った客には誰よりも親切に対応する職員だった。しかし黒田は成果を横取りし、部下を見下し続けていた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=gKyTa9ZzpOI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]