杉本すみえ、52歳。大手生命保険会社で営業を続けて25年になる。
人と話すことは苦ではなかった。断られることにも慣れていた。成績は常に上位ではなかったが、長年この仕事を続けてこられたのは、契約の数よりも人との出会いを大切にしてきたからだった。
夫は53歳。安定した仕事に就き、家庭を支えている。娘も成長し、今では親子の会話も少なくなった。
夫婦仲が悪いわけではない。ただ、いつからか寝室は別になり、気づけば10年もの月日が過ぎていた。
鏡を見るたび、自分が少しずつ年齢を重ねていることを感じる。首元のシワ、変わっていく体型。いつしか「もう誰かに女性として見られることはない」と思うようになっていた。
そんなすみえの人生に、ある若い男性が現れる。
名前は塚原亮、27歳。
きっかけは、生命保険のチラシへの問い合わせだった。新規顧客を訪ねるため、すみえは古い木造アパートの階段を上った。
ドアを開けた亮は、少し背が高く、ラフな服装をした青年だった。部屋にはコンビニの容器や洗濯物が残り、決して整った生活とは言えなかった。しかし、彼の表情にはどこか寂しさがあった。
保険の説明を始めたすみえに、亮は突然尋ねた。
「杉本さんって、いくつですか?」
「52歳ですけど」
「え、全然そう見えません」
何気ない一言だった。
けれど、その言葉はすみえの心に深く残った。夫以外の男性から、女性として年齢を肯定されたのはいつ以来だっただろう。
その日は契約には至らなかった。
帰り際、亮は言った。
「また来てください。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=-DKZ9eOuhbw,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]