「あなた、本当に何を考えてるの?」
家に帰った瞬間、妻の冷たい声が飛んできた。
いつもなら笑顔で迎えてくれる妻が、今日は腕を組んで玄関に立っていた。
理由は分かっていた。
リビングに置かれた大きな容器。
その中には、赤や黒の小さな金魚たちが大量に泳いでいた。
そう。
私は近所のお祭りで、子供たちに金魚すくいを楽しんでもらうために、金魚を仕入れてきたのだ。
「今年のお祭り、子供たちが楽しめるものが少ないって聞いただろ?」
私はそう説明した。
近所の夏祭り。
昔は屋台がたくさん並び、子供たちの笑い声が響いていた。
でも最近は規模が小さくなり、金魚すくいもなくなっていた。
小さい頃、祭りでもらった金魚を大事に育てた思い出がある。
だから私は思った。
「子供たちにも、あのワクワクを味わってほしい」
ただ、それだけだった。
知り合いの業者に相談し、祭りの日に合わせて金魚を用意してもらった。
届いた箱を開けた瞬間。
小さな命が一斉に泳ぎ出した。
赤い金魚。
黒い出目金。
元気に動き回る姿を見て、私は思わず笑ってしまった。
「これなら子供たち喜ぶだろうな」
そう思っていた。
しかし、問題はその後だった。
妻が見た瞬間。
表情が変わった。
「何匹いると思ってるの?」
数えてみると、想像以上だった。
数百匹。
小さな水槽では到底足りない。
水の管理。
酸素。
餌。
祭りまでの保管。
考えれば考えるほど、妻が怒る理由も分かった。
「善意なのは分かるけど、家で全部面倒を見る覚悟あるの?」
その言葉に、私は何も言えなかった。
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