「何か食べたい」
休日の昼前、娘がそう言ってきた。冷蔵庫には大したものがなく、私もちょうど手が離せなかったため、財布から千円札を1枚取り出した。
「じゃあ、これで好きなものを買っておいで。ただし、千円以内ね」
娘はうれしそうに千円札を握り、近所のコンビニへ向かった。
しばらくすると、娘は小さな袋を抱えて帰ってきた。中には、おにぎりや総菜がいくつも入っている。
「ずいぶん買ったね。お釣りは?」
私が手を出すと、娘は平然と答えた。
「ないよ」
一瞬、耳を疑った。
千円分を自由に使っていいとは言ったものの、小学生の買い物だ。数百円くらいは残るだろうと思っていた。まさか、お釣りを受け取り忘れたのか。それとも途中で落としたのか。
「ないってどういうこと? レシートは?」
少し強い口調で聞くと、娘は袋の中から折れたレシートを取り出した。
叱る言葉が口元まで出かかった。
だが、レシートを開いた私は、そのまま黙り込んだ。
じゃがりこベーコンバター、199円。
直巻き海老マヨネーズ、225円。
じゃがビーバターしょうゆ、177円。
綾鷹650ミリリットル、186円。
手巻寿司納豆、213円。
商品は全部で5点。私はスマートフォンの電卓を開き、上から順に数字を入力した。
199+225+177+186+213。
表示された答えは、ちょうど「1000」。
レシートにも「合計1000円」「お預り1000円」「お釣り0円」と、はっきり印字されている。
渡した千円札を1円も超えず、1円も余らせず、ぴったり使い切っていたのだ。
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