皿に書かれていたのは、茶色いソースの「Thank You」だった。
ロールケーキをショーケースから取り出すことが難しかったのではない。
真っ白な皿へ、細いソースで文字を一気に書く作業が初めてだったのだ。
近くで見ると、線の太さは少しずつ違っていた。
途中で曲がった部分もある。
それでも文字はきちんと読めて、最後の「You」まで途切れずにつながっていた。
「これ、店員さんが今書いてくれたんですか?」
私が尋ねると、トレーを運んできた男性は少し恥ずかしそうにうなずいた。
「はい。すみません、お待たせしてしまって」
「いや、ケーキを取るだけなのに、何をそんなに苦戦しているんだろうと思ってました」
思わず本音を言うと、男性は笑った。
「僕も、最初は載せるだけだと思ってました」
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