父が革靴の中敷きを押すと、指先に青黒い染料がべったり付いた。
「ほら。今日、駅から家まで土砂降りだったんだよ」
靴の中にはまだ湿気が残り、つま先の部分ほど色が濃くなっている。
父が履いていた靴下も、もともとは薄い灰色だったはずなのに、足先だけ紺色に染まっていた。
私は新しいウエットティッシュを取り出し、父の親指をもう1度強めに拭いた。
すると、真っ黒だった部分が少しずつ薄くなり、下から普通の肌色が現れた。
「本当に色移りだった……」
「最初からそう言ってるだろ」
「だって、見た目が完全に壊死なんだもん!」
念のため、指先に傷や腫れがないか確認した。
触った感覚もあり、痛みもしびれもない。
足をぬるま湯で洗い、せっけんで何度かこすると、爪の周囲に残っていた黒い色もほとんど落ちた。
私が安堵していると、買い物から戻った母が父の足を見た。
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