病院の白い天井を眺めながら、私は自分の人生について静かに考えていた。心臓の手術を終え、ようやく峠を越したばかりの私のもとに、息子夫婦が見舞いにやってきたのは、術後の経過が芳しくないと言われた翌日のことだった。
期待に胸を膨らませて扉の開く音を聞いた私だが、二人の手には、お見舞いとしてはあまりに場違いなものが握られていた。
菊の鉢植え。
日本において、菊は仏花として扱われることが多い。病床の人間に対して、あえてその花を持ってくるという行為に、無知以上の「悪意」を感じ取ったのは私だけだろうか。
「お母さん、もう先は長くないんでしょう? お葬式の準備も大変だから、縁起物を持ってきてあげたのよ」
息子の嫁が、何の躊躇もなく枕元に菊を置いた。横に立つ息子もまた、父の心配をするわけでもなく、私の退院後の住まいをどうするか、遺産の相続はどうなるのかと、死を前提とした話ばかりを繰り返した。彼らにとって、私は一日も早く去るべき「過去の遺物」でしかなかったのだ。
「もう帰ってこなくていいわ」
私は努めて穏やかに、しかし冷徹なまでの冷静さで言い放った。
二人は顔を見合わせ、鼻で笑った。どうせ寝たきりになる老人の強がりだとでも思ったのだろう。
「分かったわよ。退院しても勝手に施設にでも入ってね」
そう吐き捨てて、二人は病院を去った。彼らの頭の中には、すでに私の資産を切り売りする計算式が浮かんでいるのが透けて見えた。
退院までの日々、私は一切の連絡を絶った。彼らに対してではない。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=5SwzEIy2Cl8,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]