結婚式当日の朝、佐藤春子は鏡の前に立っていた。
淡い色合いの訪問着は、息子・健太の晴れの日のために新調した三十万円の高級な着物だった。夫を早くに亡くし、女手一つで育ててきた息子が、ついに人生の伴侶を迎える日。
「健太、今日はあなたにとって一番幸せな日ね」
春子は優しく微笑んだ。
しかし、その直後に鳴った玄関のチャイムが、彼女の人生を大きく変えることになる。
届いたのは、息子の結婚式の招待状だった。
だが、封筒の中身を見た瞬間、春子の表情が凍りついた。
招待状には赤い文字で「不要」と書かれ、さらに自分の名前には二重線が引かれていた。
そして、黄色い付箋には冷たい一文が残されていた。
「裏口から入ってください。式には出ないでください。美香」
春子は震える手で息子の健太へ電話をかけた。
しかし、何度鳴らしても出ない。
次に電話をかけた相手は、息子の婚約者である美香だった。
「もしもし、お母さん?」
「美香さん、これはどういうことなの?私は健太の母親よ」
すると、美香は冷たい声で答えた。
「今日は来なくていいですよ。席も用意してませんから」
春子は耳を疑った。
「でも、私は新郎の母親なのよ」
「困るんです。古い着物なんて着てこられても写真映えしませんし」
美香は続けた。
「それに、お母さんみたいなホテルの裏方上がりの人がいると、うちの親族が恥ずかしいって言ってるんです」
その言葉は、春子の胸に深く突き刺さった。
四十年間、ホテル業界で働き続け、倒産寸前だったホテルを三つも再建した女性。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=IRdYLWZLROY,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]