十二月の冷たい風が吹く午後、田中景子は夫・正雄とともに、息子夫婦の家の玄関前に立っていた。
今日は孫・蓮の七歳の誕生日。そして夫・正雄の誕生日でもある。景子は朝早くから準備をしていた。孫が喜ぶ顔を思い浮かべながら、老舗の和菓子店で丁寧に選んだ手土産も用意した。
「きっと蓮は喜んでくれるわね」
そう微笑んでいた景子だったが、玄関のドアを開ける前、偶然聞こえてきた声によって、その笑顔は凍りついた。
「おじいちゃんとおばあちゃんは他人だから、プレゼントだけもらえばいいんだよ」
それは息子の妻・彩花の声だった。
景子は思わず足を止めた。
「分かった? おじいちゃんたちはATMなの。お金を出してくれる機械みたいなものだから、優しくする必要はないけど、プレゼントはちゃんともらうのよ」
まるで子どもに教え聞かせるような冷たい声。
その後、小さな蓮の声が聞こえた。
「うん……」
その一言が、景子の胸に深く突き刺さった。
三十年以上、小学校教師として子どもたちに「人を思いやる心」を教えてきた景子。最後の五年間は校長として、多くの子どもたちを送り出した。
そんな自分の孫が、祖父母を「他人」と教えられている。
景子の中で、長い年月をかけて築いてきた家族への信頼が静かに崩れていった。
それでも景子は深呼吸をし、正雄とともに家のチャイムを押した。
「お母さん、お父さん、いらっしゃい」
彩花は笑顔で迎えた。しかし、その表情には温かさがなかった。
以前なら玄関まで出て、スリッパを用意してくれた。しかし、この日は違った。
二人は自分たちで靴を揃え、荷物を置いた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=ROD4kedG_B8,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]