「申し訳ございません……お席のご用意が確認できません」
都内屈指の高級ホテル、ロイヤルパレス東京の豪華なロビーで、受付係の女性は何度も名簿を確認しながら、困惑した表情を浮かべていました。
私、美智子は六十二歳。隣には夫の清一郎が立っています。
今日は、息子・健の人生で最も大切な一日になるはずでした。
私は半年以上前から準備してきた着物を身にまとい、夫も大切な礼服に袖を通していました。
この日のために選んだ訪問着は、私自身が伝統技法で織り上げた一点物です。けれど、その価値を知る人は誰もいませんでした。
周囲の招待客から、小さな声が聞こえてきます。
「新郎のご両親なのに席がないって……どういうこと?」
「まさか、呼ばれていないのでは……」
視線が集まる中、私は不思議なほど冷静でした。
怒りも、悲しみもありません。
まるで、こうなることをどこかで予感していたような気持ちでした。
やがてホテルの支配人が駆けつけ、深々と頭を下げます。
「大変申し訳ございません。新郎様のご両親のお席が、手配されていないようです」
その言葉がロビーに響いた瞬間、空気が変わりました。
そこへ、花嫁・玲奈の母親である由紀子が現れました。
高価なバッグ、派手な装飾品、見るからに裕福そうな姿。
しかし、彼女は私たちを見るなり、冷たい笑みを浮かべました。
「あら、いらしていたんですか?」
「武さんから、ご両親は来ないと聞いていましたけれど」
私は静かに答えました。
「招待状をいただきましたので」
すると由紀子は鼻で笑いました。
「でも、お席がないのでしたら、お帰りになった方がよろしいですよ。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=ftvpmPX36Uw,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]